【初期研修医向け】MSSAとMRSAの違いとは?抗菌薬はなぜ違う?【黄色ブドウ球菌菌血症】

医者の人生・キャリア

こんにちは、らーめんどくたーです。

今回は、MSSAとMRSAの違いと、その抗菌薬の使い分けについて解説します。

この記事は初期研修医向けにわかりやすく違いを解説しています。

※必ずしも全てのケースで使うと決まっているわけではなく、もちろん患者さんの病態によって使い分けるということをまず理解してください!

大きな結論として、

第一選択薬の抗菌薬は、

MSSAではセファゾリンを使うことが多い。

MRSAではバンコマイシンを使うことが多い。

この理由を、原理成り立ちから研修医向けに初歩からわかりやすく、解説します。

自分は大学病院で研修をしていたため、45人の同期の研修医と、2年間

その1つ上と下、各45人の研修医と1年間、合計130人以上の研修医と触れ合って来て、

消化器内科医となった現在でも、下にローテーションで沢山の研修医が回ってきます。

なので、研修医がわからないポイントを理解しているつもりです。笑

わからなことは、恥ではありません!むしろわからないことを学ぶのは楽しいですよ!一緒に学んで、明日からデキレジを目指そう!

この記事では感染症プラチナマニュアルを参考にしています。

MSSAかMRSAかの違いは微生物学室で「感受性」をみて、SかRか判定している。

医学生なら昔、微生物学室で、培地を使った菌の同定と感受性の試験をやったと思います。

あれ、3日間位かかりましたよね、

実際の臨床の現場でも、感受性がわかるためには2-3日かかります。

今回は微生物学室にお邪魔して実際の現場を体験してきました。

微生物学室に届いた血液培養ボトルは培養して菌を増やしていく過程で、

①グラム染色し、菌がいないかを確認、菌がいれば培地で同定する。(培養と同定)

②菌がいれば、その菌の薬に対しての感受性を確かめる。(2-3日)(感受性)

発熱、白血球数・CRP高値をみた場合、僕たちは

「感染症」を疑います。細菌感染によって、身体が熱を出したり、白血球を上げたりします。

そしてその細菌が「本来無菌であるはずの血液にまで」存在したとき、それを「菌血症」と言います。

だから、僕たちは「血液培養」で、血液から血をとるわけですね。

MSSAの治療薬セファゾリンってセフェム系だよね?メチシリン感受性ならペニシリンでは?

要するに、

①初日:グラム染色でまずグラム陽性球菌とわかる。

②その後、培地に菌を塗って、色や形から黄色ブドウ球菌を同定する。

(ちなみにコアグラーゼ試験によっても黄色ブドウ球菌を分類することができます)

③数日後:感受性試験によってMRSAかMSSAかを同定する。

が、全体の流れです。

ただ、ここで頭の良いみなさんなら気づいたと思います。

メチシリンって名前からしてペニシリンなのに、なぜメチシリン感受性のMSSAにはペニシリン系じゃなく、セフェム系のセファゾリンなの?

この疑問には、以下の歴史的背景を理解していただければ解決します。

1.昔は、黄色ブドウ球菌にはペニシリンが使われていた!

2.でも耐性がついてペニシリンが効かなくなってしまった。(=ペニシリナーゼを出すようになった)

3.ならばとペニシリナーゼ阻害剤配合のペニシリン、つまり広域な抗菌薬メチシリンが開発され、バンバン使われた。

4.そして、メチシリンにも耐性を持ったMRSAが出て来てしまった。

現在では、黄色ブドウ球菌のうち95%以上がペニシリン耐性であり、70%以上がメチシリン耐性だと言われています。

つまり、理論上はメチシリンはMSSAに効くが、耐性菌の問題から、使われなくなった。

そして、MSSAにはセフェム系の中でも狭域なセファゾリンが第一選択薬となった。

ということになります。

最強の耐性菌、MRSAには実はセフェム系も効かない

MRSAはセフェム系どころか、カルバペネム系までも効きません。

まず、MSSAとMRSAの黄色ブドウ球菌はペニシリナーゼを出すので、(ペニシリナーゼ配合のメチシリンでない限り)ペニシリン系は効きません。

よってMSSAには他のβラクタム系であるセフェム系抗菌薬が使われる。

ここまでは、お話しした通りです。

ただ、MRSAには全てのβラクタム系が効きません。

なぜかというと、MRSAの耐性の持ち方は、菌の表面の結合タンパク変異なので、全てのβラクタム系抗菌薬が効かなくなってしまったのです。

つまり、みんな大好き最強広域抗菌薬、メロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬も、βラクタム系なので効きません。

よってMRSAに効く、現在の第一選択薬は表面の結合タンパクに影響しない作用の抗菌薬、

「バンコマイシン:VCM」が使われる、というわけです。

まとめ:MSSAにはセファゾリン、MRSAにはバンコマイシン

一言で言うと、耐性菌って怖い。笑

ただ、正直臨床の現場ではそんな歴史的な考えずに思考停止しながら

グラム陽性球菌が検出されれば、まず広域なセフェム系抗菌薬+バンコマイシン投与

感受性の結果が出れば、

MSSAには狭くしてセファゾリン、MRSAにはバンコマイシン

の流れが定説です。

このように抗菌薬を適正使用することが耐性菌を減らすために重要ではあります。

ただ、その上でしっかりとfocus精査も必要になります。

つまり、どこから感染したのか、その感染源を精査すること。です。

そこに関して話すと長くなってしまいますが、黄色ブドウ球菌なら感染性心内膜炎や、腸腰筋膿瘍、齲歯による感染など色んな感染源が考えられるため、

その感染源の精査まで鑑別できるようになれば、より一歩上級編としてデキレジに近づけることでしょう。

コメント

  1. […] […]

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